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■地域ブランド最前線

第5回 地域ブランドのルール作り

品質を保証する認証制度を商標の使用基準に
「飛騨の家具」の商標と認定基準づくり

 今、地域ブランドへの取り組みが日本の各地で盛んに行われているが、そのきっかけの一つとなったのが「地域団体商標」である。この商標制度は確かに地域ブランドとのかかわりが非常に強いものであるが、「地域団体商標=地域ブランド」と勘違いしている人が少なくない。
 この商標は、2006年4月に商標法が改正されて新たに誕生したもので、同年9月から順次登録されるようになってきた。基本的には「地域名+商品・サービス名」の組み合わせによるもので、「松阪牛」「京つけもの」「九谷焼」など、その地域にある特産品や農水産物などが対象となる。
 しかし、地域団体商標は、第三者に勝手に商標を使われないようにするための権利であって、品質を保証するものではない。つまり、認定商品が消費者から高く評価され、それが「ブランド」として認識されるためには、ほかの商品にはない特徴をもち、購入した人が必ず満足するというものでなければならない。
 そのために必要な条件とは何か。それを明文化した認定基準をつくり、その基準を満たしたものを認定するような仕組みにすれば、消費者からの高い支持を集めることになる。
 こうした考えに基づき、いち早く業界ぐるみで真剣に取り組んでいる産地が「飛騨の家具」(協同組合飛騨木工連合会)なのだ。

■中国製品が名称を無断使用

 飛騨高山は奈良時代初期から、税の代わりに宮殿造営のために毎年100人余りの「飛騨の匠」を都の造営に貢進することを続けてきた。飛騨の山奥から良質な杉、檜などの木材を運ぶと同時に、高度な木工技術を持った職人も多く派遣していたのだ。それらの職人は、平安京の羅城門、法隆寺、唐招提寺、興福寺、東大寺など、京都や奈良などの著名な神社仏閣の建造に携わってきた。
 そのため、神社や仏閣の建造技術と木材を活用した家具が地場産業として古くから発展してた。彼らの技術の一部は、日本三大美祭の一つに数えられる高山祭の「高山祭屋台」にも表れている。そしてその技術で高山市の基幹産業となっているのが、飛騨の家具である。さらに地元に多いブナの木を大きく曲げる技術を取得し、それを使って椅子を製造した。これが洋風家具の需要拡大にマッチし、国内外の市場で高い評価を得た。
 ところが、中国をはじめとするアジア諸国から低価格の家具が大量に輸入され始めたのを受けて、国内市場では価格競争が激しくなり、さらには、海外からの輸入品などに「飛騨の家具」という名称をつけて販売したり、小売店などがむやみに「飛騨の家具」という言葉を使用したフェアなどの販売行為をしたりすることが横行していた。
 そこで、こうした違法な使用をされないようにするために、「飛騨の家具」という地域団体商標を取得したのである。

■「飛騨の家具」を地域団体商標の取得へ

 ところが外部の業者に「飛騨の家具」という表記を使われないようにするという考えだけでは、消費者からの評価を高めることは出来ない。つまり、飛騨の家具が他の産地で作られた家具より優れているか、飛騨でしか作ることのできないものでなければならないのだ。そこで、飛騨家具の業界では一丸となって「飛騨の家具」のブランド管理および認証基準等の策定に取り掛かっている。その認証基準の方向性は以下のとおりである。

------------------------------------------------------------- 「飛騨の家具」認証基準要綱の内容(抜粋)

1.木材基準
 木材の伐採地、伐採方法など
2.産地基準
 家具の加工地、飛騨地域に由来する製法など
3.品質基準
 PL法、消費生活用製品安全法などの遵守と、購入後の保証など
4.精神基準
 飛騨の歴史、文化、技術等の継承活動など
5.デザイン基準
 デザイン性向上に注力、消費者の安全・安心等へのこだわりなど
6.エコロジー基準
 原料、廃棄物、リサイクル等の環境への配慮など
(※現在検討中のため、実際には一部変更になる場合があります)。
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 この認定基準は5W1Hを明確にするだけではなく、品質や、文化、デザイン、環境など、使用者や地球環境に対して徹底した姿勢を貫くことがうたわれていることが特徴である。だからこそ、消費者はこの認定を受けた家具を、品質面ばかりではなく、健康面や環境面でも安心して購入し、使用することができるのだ。
 ところが、最初はこうした厳しい認定基準を作ることに対して反対する人も少なくなかった。この基準を守った商品はほとんどなかったからである。
「自分たちの産地の商標なのに、それを使えない商品があるのはおかしい」
 このような意見が会員の中から続出した。原材料の大半は海外からの輸入に頼り、製造行程の一部分も他産地に委託しているのが現状なのである。国産木材は確保するのが困難で、製造や管理を厳しくすればするほど、それはコストアップにつながってしまう。利益を圧迫してまで厳しい基準を満たすことが産地や企業にとっていいことなのか。参加企業の多くは疑問に感じたのだ。
 しかし、現時点でも価格面では中国産家具との競争に勝てる見込みはない。そして、国産家具の間でもますます産地間競争は激しくなっている。そうであれば、飛騨の家具は他の産地の家具より「差別的優位性」を明確にして、競争優位に導くか、価格プレミアムを創出するしか方法は残されていないのである。
 簡単には守れないような厳しい基準をつくり、それを目指すことによって、産地としての技術や品質が向上し、産地としての競争力と持続性が高まる。最初は基準にあう商品はほとんどなくてもいい。しかし、数年後には何割かの商品は「飛騨の家具」という名前で販売できる基準のものになり、さらに数年後にはこの産地で製造される商品の多くが「飛騨の家具」という名前で自信を持って売ることができる。
 飛騨の家具の認定基準はこうした考えに基づき、非常に厳しいレベルで設定されている。中国や他の産地が追随できないような基準を作り、それを遵守しようとすることによって、むしろ飛騨の家具は日本一、いや世界一の評価を勝ち得ることができる。
 結局、飛騨木工連合会は目先のものに固執するのではなく、他国や他の産地にはない厳しい認定基準を設定することを選んだ。それは購入する消費者の産地としての将来を考えた結果といえるだろう。

■商標だけではブランドは守れない

 2008年7月末までに地域団体商標は日本全国で約400件が取得されている。しかし、商標を取得するだけでは、産地を守ることも、それを消費者からの評価や購入につなげることもできない。しかし、飛騨の家具のように、品質と地域を保証する基準を設定することができれば、消費者からの高い評価を得て、市場競争力も高まり、産地としての持続性も高まることになる。
 認定基準作りというのは、そのブランドが目指すべき方向性を定め、それを消費者と約束するものなのである。それが守られれば、その対価として、その地域は「ブランド」という称号を消費者から与えられるのだ。

                  ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄

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